カール・ツァイスレンズは、カール・ツァイス財団が製作、またはそれ以外のメーカーによってライセンス生産されたレンズである。 写真用以外にも顕微鏡や望遠鏡用、高級メガネレンズなどの多種多様な目的に応じた高性能レンズが製作されており、その性能の高さは世界中で高い評価を得ている
単焦点レンズ
Hologon(ホロゴン)
エルハルト・グラッツェルによって発明された超広角レンズであり、ディストーションがほぼ完璧に補正されている。シンプルな構成とほぼ前後対象なレンズ配置をしている。レンズ後端からフィルム面までの距離が短く、一眼レフカメラでは使用することができず、レンジファインダー・カメラ専用となっている。
当初はあまりに特殊なレンズのため、「ホロゴンウルトラワイド」というレンズ固定のカメラとして発表され、画角の広さ故手が写り込むのを防ぐためハンドグリップが設定されていた。 後にLeica Mマウント用に少数が供給されたが多く売れるレンズではなく、結果として稀少なため現在では非常に高価である。
一旦は消えたレンズであったがCONTAX Gシリーズで16mm/F8として復活した。現実的な価格として使えるホロゴンは今の所G用ホロゴンのみである。周辺減光は非常に激しいためグラディエーションフィルターが付属する。 製造はドイツCarl Zeissで行われた。名称の由来はホロス(古代エジプトの神)とゴン(角度)から来ている。
ZMマウントでの復活は京セラCONTAX Gシリーズのように外部測光を必要とするためか、今のところアナウンスされていない。
Biogon(ビオゴン)
ルードヴィッヒ・ベルテレが発明した広角レンズ。ホロゴン同様描写力のみを追究しておりディスタゴン以上に像に歪みがなく、レンジファインダー・カメラ専用である。ハッセルブラッドがこの描写に惚れ込み専用カメラを出した。CONTAX Gシリーズのビオゴンは同じスペックのSLR用を凌駕していることで知られる。 35mm用は21mm/f4.5と28mm/f2.8である。CONTAX用に設計され、のちにCONTAREX用も作られた。CONTAREXは一眼レフであるのでミラーアップして使用する。 ハッセルブラッドSWCはビオゴン38mm/f4.5専用カメラ。銘命はビオ(生命)とゴン(角度)が由来。
COSINAとZeissのZMマウントで21~35mmが現在存在しているが、前後対象形のオリジナルと比べると変化が激しい。
またビオゴン 35mm F2.8 は、旧ソビエト連邦の各メーカーによって Jupiter-12 銘でコピー品が多数つくられ、コンタックスマウントやライカマウントのものが今でも安価に流通している。
Distagon(ディスタゴン)
エルハルト・グラッツェルにより開発されたレトロフォーカス構造の広角レンズ群の名称。構造上からレンジファインダー用のビオゴンが使えない一眼レフカメラ向けである。ヤシカコンタックス用の35mm/f1.4は非球面レンズやフローティングシステムをいち早く採用し広角レンズとは思えない描写を誇る。また21mm/f2.8は収差を徹底的に排除しアポ・ディスタゴンと呼称する向きもある程で、どちらも特筆すべき名レンズである。
またZMマウントでもレンジファインダー用でありながら15mmという焦点距離で復活している。ZFマウント(ニコンFマウント)およびZSマウント(M42)では35mm/f2、25mm/f2.8が販売される予定である。名称はディスタンス(距離)とゴン(角度)から来ている。
Planar(プラナー)
パウル・ルドルフが発明したレンズ。前後対称な構造をしており、なおかつ大口径化が容易である。主に標準レンズに採用されている。プレーン(平坦な)が名称の由来。レンズコーティング技術が実用的でない戦前は半ば埋もれた感もあったが、Tコーティング、T*コーティングが実用化されSLR全盛となるとZeissの看板レンズに踊り出た。
現在発売されている「ダブルガウス」と呼称されるレンズ構成は全て、プラナー形式そのもので「プラナー形式」と呼ぶのが実際の所は適切である。各社Zeissの亜流と解されるのを嫌ってのことか、名称の使用をZeissが許さないのかは不明。
50mm f/1.4は標準レンズの帝王と謳われた銘レンズであるが今日では設計年次の古さは覆うべくもない。しかしながら開放での描写や色調は今でも独自の特徴を持っておりファンは根強いものがある。 85mm/F1.4は50mm/F1.4の癖がさらに増幅されたような描写で評価が高い反面、開放での被写体深度の薄さ故、扱い難いレンズであり愛憎されるレンズである。製造毎、製造国により描写が異なるため、好みの描写を求め売買いを繰り返す人たちの存在は公然の秘密であった。 55mm/F1.2・85mm/F1.2はZeissの力を誇示するレンズであるが限定販売に留まっている。
京セラ・Carl Zeissの共同事業によるコンタックスシリーズでは
ヤシカコンタックスマウント(MF35mmカメラ) - 50mm/F1.4、50mm/F1.7、55mm/F1.2、85mm/F1.4、85mm/F1.2、100mm/F2、135mm/F2
Nマウント(AF35mmカメラ) - 50mm/F1.4、85mm/F1.4
645(中版カメラ) - 80mm F/2
G-1,2(AFレンジファインダーカメラ) - 35mm/F2、45mm/F2
が製造された。
コシナとカール・ツァイス社による事業ではZMマウントでは50mm/F2、ZFマウント(ニコンFマウント)で50mm/F1.4、85mm/F1.4、ZSマウント(M42)で50mm/F1.4が現在販売されている。 またソニーαシステム用マウントでも2006年10月27に85mm/F1.4が発売されたがZeissの検品に合格しない固体が多く出荷が大きく遅延。また殺到した注文もあり予約分すら生産が追いつかない。日本でのプラナー人気は健在である。
Tessar(テッサー)
コンパクト設計のレンズ。パウル・ルドルフ設計。 3群4枚構成を持ち、このレンズの登場によって多くの人々が「普通によく写る」レンズを手に入れたといわれ、他のレンズメーカーにも多大な影響を与える。 通称「鷲の目」。シャープさが特徴である。 また単純な構成から非常にコンパクトでありパンケーキの呼称で呼ばれる事もあり、スナップ重視のユーザーの支持は厚い。 名称は構成レンズ数から来ている。
なお、本来の3群4枚構成からは逸脱する事もあるが、多くの望遠レンズにもテッサーの名称が使われている。その場合はテレテッサーと呼ばれる。 特徴としてはレンズの構成枚数が少なくレンズエレメントの空間が比較的長いので、軽量コンパクトな望遠レンズになる事である。
Sonnar(ゾナー)
ルードヴィッヒ・ベルテレが発明したレンズ。レンズコーティング技術が実用的でなかった戦前に、空気境界面を減らす事によりダブルガウス(プラナー形式)に比べ格段にシャープな画像を可能にした。設計のための膨大な計算書が宣伝に用いられた程で、当時最高度の技術の結晶ともいえる(ライカが同じ焦点距離で同じf値のレンズを出すのは10年以上後)。 レンジファインダーで大口径標準レンズ(ハイスピードレンズ・5cm/F1.5/F2)として使用されていた。 一方で大きなガラス塊を必要とし高精度に張り合わせる構造は非常に高価となり、空気部分をガラスで埋める構造は重量増加を招いた。 また85mm/F2はContaxの高精度の距離計と相まって高い評価を得ていた。 さらにベルリンオリンピック用に開発された180mm/F2.8 はオリンピア・ゾナーと呼ばれ戦前の望遠レンズでありながらF値2.8を誇った。 現在ではCONTAX T・T2・T3などの高級コンパクトカメラのレンズとして使用されている。特に、CONTAX T3用のゾナーは最新の設計によるもので、一眼レフ用のレンズを凌ぐ性能を有し、高い評価を得ている。 ゾナー形式はレンズをコンパクトに出来るが、バックフォーカスが短めなため、一眼レフカメラでは望遠レンズに使用されるに留まっている。線の太い力強い描写力が特徴。また、被写界深度はプラナーに対して深めであるのも特徴。名称由来はZeissの工場が郊外にあった都市ゾントホーフェンという説と太陽(ゾンネ)からという2つが知られる。
ヤシカコンタックスでは85・100・135・180mmがラインナップされている。180mmはオリンピアゾナーと同焦点であるが構成は異なっており直系とは言い難い。また85・100・135mmの同焦点のプラナーに対し低価格であるが、これは後群がガラス塊で構成される所を空気に置き換えているためであるが、「だから低性能」と言う事ではなく描写の違いの差でしかないのはZeissの意地を示している。
ハッセルブラッド用には究極の画質を追求したスーパーアクロマートレンズ(Sa)250・350mmも用意されている。またテレフォトパワーパック(TPP)のFE300mmもゾナー形式のレンズである。
ZMマウントではC Sonnar 50mm/F1.5の呼称で5cm/F1.5が復活し、85mm/F2が販売されている。ただし85mmの構成はゾナーというよりプラナーに近い。
ソニーαシステム用マウントでは135mm/F1.8が販売されている(α100はCCDがAPS-Cサイズのため35mmフォーマット換算で200mm相当のハイスピード望遠レンズである)。
またビオゴンと同様に、旧ソビエト連邦において同じ設計のレンズが多くつくられている。Jupiter-3 はゾナー 5cm F1.5、Jupiter-8 はゾナー 5cm F2、Jupiter-9 はゾナー 85mm F2、Jupiter-11 はゾナー 135mm F4 のそれぞれコピーである。